2021/2/26

【よみもの】はたけのカレーペーストができるまで。

「あぁ、いい香り!コリアンダーにアムチュール、堪らないですね!!」
大鍋に入った野菜のペーストにスパイスを入れ木べらで混ぜると室内に香りが充満した。

2月、逗子の調理室では、形や色が不揃いな規格外の野菜を利用した『はたけのカレーペースト』が作られていた。
スパイス商のバラッツともったいない野菜を瓶に詰め込むファームキャニングがタッグを組んだユニット『HOTCHPOTCHERS(ホッチポッチャーズ)』が手がける瓶詰めのカレーペーストだ。旬の野菜にオリジナルで調合したスパイスを加えて作る、まさに一期一会のひと瓶。昨年7月、第1弾となる夏野菜のペーストを皮切りに、10月には葉野菜の鮮やかな緑色のペーストが作られ、その特別な美味しさだけではなく、フードロスの削減や農家の収益確保など、様々な視点から注目が集まっている。そしてこの日は、第3弾となる2種類の人参と長葱を活かしたペーストが生まれようとしていた。

調理を担うのは、ファームキャニングのディクソン江梨さんと松岡由里さん、そしてアナンのメタバラッツさん。
藤沢の柿右衛門農園で採れ、保管されていた段ボール一杯の金時人参と黒田五寸、それに豊作の長葱が主役だ。その重さ、野菜だけで25キロあまり。前日の晩から仕込んだ大鍋二杯の野菜ペーストにスパイスを加えて完成させる。

由里:水分がないので焦げやすくて重いんです。
江梨:高知の生姜と青森のにんにくを加えていて、今はまだ生姜の苦味を少し感じます。
バラッツ:人参の甘みが結構あるから、コリアンダーやアムチュールの爽やかさにココナッツの甘さを加えて、ちょっと変わり種のキャラウェイが合うかな。カレーペーストではあるんだけど、人参が主人公のペーストに仕上げたいね。

火をつけた鍋に、まずはココナッツフレークを入れ、木べらでひたすらかき混ぜる重労働。

バラッツ:ここでしっかり火を通したいんだよね。じゃないと、油が回っちゃうから。これで人参にさらに甘みが加わるはず。

20分ほどかき混ぜ、バラッツ201と呼ばれるスパイスが調合されたカレー粉と、キャラウェイ、塩を投入。さらにかき混ぜる。

江梨:おぉー、いい香りですねー。
由里:コリアンダーにアムチュール、堪らないですね!!
バラッツ:これは重い…。トマトが入ってないから水分がないんだよね。焦げ付かないようにしっかり混ぜないと…。
江梨:トマトは季節的にとれないですからね。使っている人参は全部規格外の形や大きさで、農家さんが年末からストックしてくれていたもの。金時人参はやはりお正月を過ぎると売れなくなるみたいです。

バラッツ:端境期とか、農家が売れるものがないときにこういう瓶詰めの商品があるといいですよね。しかも捨てられてしまうかもしれなかった野菜を使えるのがいいよね。
江梨:今回の人参も、暖かくなってきてこれ以上の保存はきかないタイミングだったみたいです。最初は玉ねぎの予定だったけれど、長葱がたくさんあるなら長葱に変えようって、そんな感じで。毎回、味が違うのも魅力ですよね。

カレーリーフを加えて完成。その味は…。

由里:甘くて美味しい!昨日とは全然違う味。後から辛みがきますね。
バラッツ:最初にくる辛みは青唐辛子で後からくるのはスパイスの辛み。少し落ち着いたらもっといい味になりそうですね。
江梨:生姜の苦味が全くなくなりましたね。ジンジャーキャロットカレー、全然違う味ですごい!スパイス、すごいねー!!
バラッツ:毎回、味を均一にするっていうのは相当大変だけれど、均一にしようとするから問題になるんですよね。違いを楽しめるといいよね。

日時:2021年2月9日
場所:FARM CANNING (逗子市久木)
取材・文/中村早紀

規格外の野菜を美味しくレスキュー『はたけのカレーペースト』第3弾
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